2018.02.20 乗り物ニュース
草町義和(鉄道ライター)
貨物列車のコンテナ10cm高く
線路の「空間」そのままでどう解決?
→ 新戦力 コキ100系 に統一!
規定の高さを100mmアップ
JR貨物は2018年3月17日(土)のダイヤ改正を機に、「汎用コンテナサイズ」の寸法を変更します。
幅と長さは これまでと同じで、高さを拡大。
背の高いコンテナを運びやすくします。
「汎用コンテナサイズ」は、どの路線のどのコンテナ車にも載せられるように JR貨物が決めたコンテナの規定寸法のことです。
現在の汎用コンテナサイズは、高さ 2500mm、幅 2450mm、長さ 3715mmと定められています。
JR貨物が保有するコンテナのうち、19D形や19G形など「19形式」のコンテナが 汎用コンテナサイズで製造されています。
3月17日以降の汎用コンテナサイズは、幅と長さは 従来と同じ。しかし 高さは 2600mmで 100mm拡大しています。これにより 容積は 0.7~0.8m3増えて19.5m3になります。
JR貨物のコンテナでは、20D形や20G形など「20形式」のコンテナが、3月以降の新しい汎用コンテナサイズと一致します。
JR貨物は「コンテナに 積載できる貨物の容積が拡大するため、より利便性が高まります」としています。
トンネルや鉄橋なども、それに応じて広げなければならないはずだが 貨物列車が走っている路線で、拡大する工事が行われたという話は聞きません。
線路の「空間」は 何も変わっていないのに、コンテナが大きくなるというのです。
旧型コンテナ車が抱えていた「課題」
今回、JR貨物が汎用コンテナサイズを拡大することにしたのは、同社が 30年にわたって進めてきた コンテナ車の置き換えが、ほぼ 完了したためです。
JR貨物がこれまで使ってきたコンテナ車は、主に コキ50000形と コキ100系の2種類が あります。
コキ50000形は、
1971(昭和46)年度から1976(昭和51)年度にかけて大量生産されたコンテナ車。汎用コンテナサイズで 製造された5tコンテナを 最大5個積載できます。
ただ、日本のコンテナ車は 原則として、高さが 3600mm(コンテナ積載時)に抑えられてきました。コキ50000形は 荷台の高さが 1100mmですから、積載できるコンテナの高さは 3600-1100=2500mm。標準的な国際海上コンテナは 高さが 2591mmであるため、コキ50000形では 運ぶことができないのです。
「低く」して「高く」した新型
こうした課題を解決するために開発されたのが、JR貨物の発足後に デビューした コキ100系です。
1987(昭和62)年に 試作車が製造されました。
コキ100系は 台車の寸法を見直して 荷台の高さを 1000mmとし、コキ50000形より100mm低くしました。
これにより、積載できるコンテナの高さは 3600-1000=2600mmに 拡大。高さが2591mmの海上コンテナも積載できるようになりました。
JR貨物は 1988(昭和63)年からコキ100系の量産を開始。高さが2500mmを超えるコンテナの導入も 始まりました。
ただ、大量にある コキ50000形を コキ100系へ 一気に置き換えるのは 資金的な面などから困難だったため、しばらくは コキ50000形と コキ100系の両方を使い続けるしかありませんでした。
コンテナ車「統一」で制限なしに
こうしたことから、JR貨物は
コキ100系のデビュー後も、
「19形式」など 高さが2500mmのコンテナを汎用コンテナサイズと位置づけてきました。2500mmを超えるコンテナには「コキ50000積載禁止」などの表記を入れ 積載ミスの防止を図っています。
実際は、コキ50000形に 背の高いコンテナを積載しても 問題ない高さを確保した路線が多く、そうした路線では「コキ50000積載禁止」と記されたコンテナを積載したコキ50000形が 運転されることも ありました。とはいえ、コキ50000形に 背の高いコンテナを積載できない路線が存在する以上、汎用コンテナサイズを変えることはできなかったのです。
しかし、コキ100系の増備が進んだ結果、コキ50000形は 3月のダイヤ改正で定期運転の貨物列車から引退することに。
どの路線でも、高さが 2500mmを超えるコンテナをコンテナ車に載せることができるようになるわけです。
そこで JR貨物は 今回、汎用コンテナサイズの変更を決定。
今後は 新しい汎用コンテナサイズに適合した「20形式」コンテナの製造を進めていくことにしました。2018年度は20D形を2650個、20G形を1300個、それぞれ製造する予定。これにより「19形式」の更新を 順次進めていくとのことです。
【了】
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